ウチダカズヒロのブログ

最近は読書感想文を書いてます。オススメ本を教えてください。読書感想文のご依頼あれば、読みます(たぶん)。kazgeo@gmail.com まで。

読書感想文「千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話」済東鉄腸 (著)

 千葉の子ども部屋に引きこもりながらも、世界(世の中の意味ではなく、ホントにワールドワイド)につながっちゃったトゥルーストーリーだ。
 蛮勇を持って突き進む中世の騎士ドンキホーテ様さながらのおかしみが堪らない。本人もわかっているのだ。痛い自意識過剰がルーツなのだ。周りは優しくしなくちゃいけない。
 だが、本書の価値は、学びとともにある人生と「好き」が人生を開くさまだ。
 学びとその環境の関係、例えば留学とは何かと突きつける。もちろん、モノは見なくちゃわからない。ホンモノや実物を見ること、マスボリュームを体感することの価値は当然ある。だが、済東のルーマニアメタバースの破壊力は知るべきだ。とりあえず、つながっちゃえ、友達リクエストは送っとけ。自分をその環境に置くこと。それは自習をするために、図書館の自習室にこもることと同様に、自分の日常の繋がり(それが画面上ではあっても)をルーマニア転換してしまうのだ。自分の環境を転換させてしまうこと。無理矢理その環境に置くのだ。考えてもみよ。済東が4000人のルーマニア人に友達リクエストを送ったFacebookだけじゃない。流れるツイートも受信するメールも、有料動画の字幕も何ならニュースだって全部、ルーマニア語だったら、友人やフォロワーが千人単位でルーマニア人だったら?そこはルーマニアだろ?駅前留学はnovaだが、自室がルーマニアだ。
 そして、済東はちゃんとした目的意識を持った立派な大人になる。自身の過剰な自意識を相対化できるようになる。子ども部屋がインキュベート・ルームとしてルーマニア語作家を生み出したことの全力実況だ。