工長、組長たちの「オヤジ」の話しだ。
「きつい、汚い、危険」の3K職場に人が定着するとは、人とカイシャを信じられる、そんな現場が大事だということだ。
仕事は、人がする。人が集団で仕事をするなら、人と人との関わりが大事になる。職場でのインフォーマルな活動とは、集団における毛繕いのようなものだが、この毛繕いを大事にすることで培われるものがある。「人望」だ。呼称としての「オヤジ」とは、インフォーマルの最たるものだ。「何なんだよ、それ」とも思うが、職名でもなければ、敬称かすらアヤシイ。ただ、互いに呼ぶ方も呼ばれる方も、この符牒を使うことで、グッと距離感が近いことを確認することができる。
面白い逸話がある。品質、稼働率が最悪だった工場を建て直すため、休憩時間にちゃんと休むことができるよう休憩所を徹底的にキレイにして、椅子を新品にし、設備をよくしたという。そうすると、モチベーションが上がって品質がよくなった。現場に通じているからこそ、労働環境を良くすることと品質向上とが、比例関係にあるとピンと来るのだ。
いいものを作るのは製造現場だ。その製造現場がしっかりしているのが大事であり、そのために現場をまとめるのが班長や組長たち、いわゆるオヤジ。では、そのオヤジたちに求められる技能とは何か。「部下にわかりやすく教える能力」だという。当然、「きちんとやれ」「ちゃんとやれ」なんて、いい加減な言葉じゃダメだ。そのためには、ハートに響く言葉であり、「部下が理解してないのは、部下が悪いんじゃない。教えた方が悪いんだ」という気概である。また、トヨタは教育熱心な会社で、人を育てる教育ばかりやる、という。人を育てないと、いいものはできない。組長の仕事とは人を育てることに尽きる。
数あるトヨタ本の中でも、上べだけでなく、そのキモを描いた稀有な一冊であり、会社組織における浪花節と義理人情の世界に触れた本でもある。この本を読んで知りたくなったことがいくつもある。パーソナルタッチ、PT活動の実践もその一つだし、企業内訓練校のトヨタ工業学園も覗いていみたい。何より、田原工場へ工場見学に行ってみたいぞ!
