奇跡というのは、さらに次の軌跡を生むことがある。奇跡とは、人が起こし、それを人が見出すからだ。
地価の高騰や土地の投機による地上げの横行に対抗して「総量規制」が行われた結果、貸し渋りや貸し剥がしが起き、信用縮小の結果、日本の金融がズタズタになった。そして、構造改革が必要だ!などと正体不明な言説が蔓延り、資産デフレが生じ、健全な企業であってもバタバタと倒れることとなった。バブル崩壊と潰し潰された大勢の企業や人生があったことを僕らは知っている。その後も、円高不況で製造業は辛い状況になり、インターネット革命・IT革命は事務コスト低減の手段だけだった。さらに、リーマンショックが致命傷になった会社も多い。
広島の家具メーカー・マルニ木工は、この平成の荒波の直撃を受けた。確かに波に乗って強気の経営があった。だが、景気後退どころか、日本全体の経済がシュリンクする中で、製造する商品群が見向きされなくなり、消費者嗜好も変わった。会社が無くなる可能性の方が高かった。しかし、同社は生き残った。奇跡と本書は呼ぶが、私は縁と言いたい。郷土・広島人のつながり。デザイナーという職能の界隈での仲間意識。創業家のなかでの濃い関係。
奇跡は作るものではない。だが、降ってくるチャンスを何としてでもものにしようとする強烈な意志が生む何かを「奇跡」と呼ぶのかも知れない。
