テーマは組織内コミュニケーションである。
主人公は能吏・梶川与惣兵衛。高い地位の役職者と場を一緒にしなくてはならない気苦労の絶えない気遣いのある勤め人だ。残念ながら、切れ味鋭い解決策をズバッと示すような人ではないし、懐に飛び込んで上役の心持ちを変えさせちゃうような寝技が使えるタイプでもない。真面目で心配性な人だ。
松の廊下に至る話を現代社会に置き換えるとこうなる。発注元の大企業が行うセレモニーでは、いつも司会進行を古くから懇意のイベント屋・吉良上野介が仕切る。大企業の下請けの工場の経営者は、都会育ちだけど、親の地元のヤンキーのスタイル自ら学んで身に付け、そうした体を装いつつ部下思いな若き中小企業経営者一族の浅野内匠頭だ。大企業の協力会のメンバーだから、毎年のセレモニーへの参加は、下請けとしては欠かせない。しかし、進行役が作るタイムテーブルや出し物の段取り、予算管理など、たまたま当番の年だからと言って、何でイベント屋にそこまで言われなきゃならんのか、「何やねん、お前」である。
つくづくコミュニケーションは難しい。何故なら、そこには意志や感情が湧き上がってしまう目の前の相手への評価や思い込みが付加されるからだ。単純な情報の伝達ではない。だからこそ、勝手な価値判断を、自分の都合と立場で固めてしまってはいけないのだ。気をつけなくてはならない。人と言葉に丁寧であろうとするべきだ。そして健康への留意も。
