ウチダカズヒロのブログ

最近は読書感想文を書いてます。オススメ本を教えてください。読書感想文のご依頼あれば、読みます(たぶん)。kazgeo@gmail.com まで。

読書感想文「知能とはなにか ヒトとAIのあいだ」田口 善弘 (著)

 しょせん、世界認識を目的に、現実っぽく再現するために再構築(シミュレーション)しようとする試みなのだ。
 「知能とはなにか」である。タイトルでか過ぎ問題である。答えはシンプルだ。定義があるようで、実はない。そんなことある?と聞き返したくなるが、物理学から知能研究、深層学習を長年追ってきた著者にとっては、不思議なことではない。それだけ揺らぎのあるものだし、コンピュータサイエンスの急発達が突破口を開いてしまっただけのことであって、起きていることと、原理原則の理屈から状況を把握してみれば冷静になれる話しだったりする。
 本書は、2020年代の生成AIのブレークスルーをあらためて振り返るとともに、ギリシャ・ローマの時代からの世界を理解するための古典的な物理法則などの手法により生身の人間が脳でもって現実世界を脳内で再現してきた人類史とは別に、大規模な深層学習とは独自に進化した物理学により現実把握した結果を出力し始めたのが生成AIということだ。なので、人間の脳の再現ではなく、それっぽく振る舞う似て非なるモノである。現状、べらぼうな出力を発揮する能力を持つが、根本の人間の知能とは違う。出力結果だけを見て、シンギュラリティが来ただの来てないだの叫んでも意味がない。人間の脳が行なっていることとまた別の話しなのだ。
 いま、我々が手にし始めているのは、人類にとって新たな道具だ。動力機械、医薬、アンモニア合成、原子力発電など人類史を書き換える能力拡張のテクノロジーに、生成AIが連なる場面だ。もはや、生成AI抜きの社会がこの先あり得ないのだとして、冷静に「知能とはなにか」の問いと向き合っておいた方がいい。もっともらしい結論を我々に提示してくる知能っぽい何かの理解のための一冊だ。