読書感想文「伊藤忠 商人の心得」野地 秩嘉 (著)

 商社・伊藤忠の経営姿勢がわかる一冊。
 肉声が聞こえる、と言っていい。営業とは何か。商売における誠実さとは何か。個々の社員がどう目標を持つか。会社は社員にどう働いてもらうか。語られる言葉は、ハートを動かす。読むと伊藤忠を好きになっちゃう本だ。
 卸や仲介といった情報やブツを握ることに商社の立ち位置があった時代が、インターネットとショッピングカートと個別配送が当たり前になって、事業投資会社の性格が濃くなった。そうなるとグループ会社がどう機能していくかが、より重要になる。とは言え、商社だ。取引先、市場の様子に気をかける。だからこそ、商売の基本、商人の基本が繰り返される。スマートな印象がある商社だが、案外とベタで、カギとなるのは人(ひと)なのだ。
 現在、株主配当は、1株当たり200円。就職人気企業ランキング1位。2024年の総資産、株主資本、実質営業キャッシュフローが過去最大。ROEは、総合商社1位。これら華々しい成果のバックボーンを我々は一読者として知っておいてイイのではないだろうか。