ウチダカズヒロのブログ

最近は読書感想文を書いてます。オススメ本を教えてください。読書感想文のご依頼あれば、読みます(たぶん)。kazgeo@gmail.com まで。

読書感想文「対馬の海に沈む」窪田 新之助 (著)

 ある地方の不正事件、不祥事である。
 閉じた人間関係の田舎の風景でもあるし、肝の小さい連中が寄ってたかっておこぼれに預かろうとし、無心した気持ちの悪い話だ。つまり、巨悪は出てこない。薄汚い小物がうようよいて、その時だけの私利私欲にありついたのだ。なぜ、不正の使いっ走りを請け負う仲間が組織内で増殖するのか、それは決して十分な給与や手当が支払わず、過度なノルマが上部団体から割り当てられるからだ。
 暗澹たる気持ちになるのは、監査や会計の担当がまったく機能しないことだ。確かに告発者はいた。告発者が左遷されるのを見て、口をつぐむことにした者も多かっただろう。地方の小さな組織において、トップとツーツーの者から反感を買うと不遇となる。だが、不正義への加担を広げないためにトップへの牽制機能が欠けていた、ということだ。
 とにかく、気持ち悪いのは、小狡い連中が、分け前やおこぼれが滞るや否や散り散りになって、不正発覚へと途端に傾くことだ。結局、首謀者と見られた男は、全国組織の末端で、おだてられ、踊らされていただけに過ぎず、一家郎党をまとめる統率力、リーダーシップも無かったのだ。いったい、なにが「軍団」だ。
 貧すれば鈍するの例であり、ノルマを課して、栄光を表彰した全国組織側の担当者などは、一介のサラリーマンとして事件のことには頬被りの知らぬ存ぜぬで、今日も能脳と「適切な」業務の執行に励んでいることだろう。