ウチダカズヒロのブログ

最近は読書感想文を書いてます。オススメ本を教えてください。読書感想文のご依頼あれば、読みます(たぶん)。kazgeo@gmail.com まで。

読書感想文「わたしのおとうさんのりゅう」伊藤比呂美 (著)

 薄れて朧げになっていく家族の記憶を、娘が語る話しだ。よくもマァ、ここまで掘り下げたものだし、向き合ったものだ。
 ヤクザと芸者から足を洗って堅気として生きる両親のことを、記録と幼少の文学体験とともに辿る。大好きな父とはいえ、記録された父の記述はネガティブだし、反社そのものだ。小説や映画の登場人物にまでされるのだ。腰を抜かすだろう。
 魅力的な父に、愛された娘である。その父は「負ける」ことを知っている。「負けた」後の人生を生きている。才能もあった。実は、そうして生きた大勢の人たちが日々、暮らしたという昭和でもあった。
 司馬遼太郎は明治を讃えるが、教育や文明は庶民の暮らしの隅々まで行き届くことはなかった。乱暴さと無教養が野蛮な社会を作っていた。結局、戦後とは何だったのか。リセットされ、平和を希求したのは正しくとも、戦前・戦中を完全否定した。戦後に誰が機会を与えられ「インテリ」の役割でもって、物事を決定する立場になったのか。そうした戦後の指導的地位なんてのは、本人の能力と努力というのかも知れないが、割と偶然や好き嫌いの関係でもって得たに過ぎなかったりする。
 うっかり、過去を覗いてしまったためにやるせなさに包まれる。