言われてみれば当たり前のことだが、江戸時代には戸籍はない。近代明治国家が、すべての人民を一元的に管理し、徴税と徴兵を課すために作ったのであり、そこで日本人とされた者が住むところを本邦の領土としたのだ。いや、その逆も然り。我が国土に住む者を日本人とした。始まりはそうだった。
いわば、国家の都合である。民衆が寄って、おらが国王を据えたのではなく、武士階級の権力闘争により統一国家を為した際、武士階級の管理手法を万民に応用しようとしたのだ。なので国家として、国民の権利を保護することを第一に始まった制度ではない。そして、そのことが権利の主体となることから溢れ落ちる人を生みだすこととなる。そもそもが、手続法のディテールに至る想像力が立法者や研究者に十分ではなく、そのことがさらに実体法の欠陥の放置につながった。このことは、戦後の近隣諸国との軋轢や差別の温床にもなり制度の不備解消の不作為が招いた責任は重い。
この本は、住民票やマイナンバーについてもしっかりと記述されており、一層、戸籍という謎めいた、「亡霊」のような存在への理解が進む。
家という制度は無くなったが、家における家計、例えば家族経営の事業者だとすると、同一家計の財産制として「家」の制度は戸籍とともに残っていった面についての税制側などからの研究が今後の課題ではないだろうか。
家族法や相続法に携わる者にとって必読の書である。
