海砂利水魚


 落語で,たまたま前座噺の一つの寿限無を聞いた。勢いだけでやらてしまいがちなネタであるので,決して好きなネタではないのだが,聞いているうちに,ふと気になった。
 子どもにつけた長い名前の一部に,「海砂利水魚」と出て来る。これまで特段,気にも留めなかったのだが,ご隠居さんが,これを「海の砂利や水中の魚のように数限りない」と説明する。それだけ,子どもに長生きしてもらいたいとの願望なのだ。
 ところで,現代における海砂利水魚とは。海砂は,波浪の浸食でどんどん砂浜が減り,また,魚は漁獲制限が施されるほど,その数に限りがあることの象徴のような存在になっている。
 海砂利水魚とは,その意味したところが通用しなくなったということの例え,といえるのではなかろうか。
 そんなことを思った。