読書感想文「頭のいい人が話す前に考えていること」安達 裕哉 (著)

 「謙虚に聞こう」と考えているのだ。
 この謙虚になる相手というのは、クライアントだったり、上司だったり、先輩や同僚、部下ということもあるだろうし、言葉や歴史、シチュエーションそのものだったりもする。謙虚な態度や振る舞いのもとで発する言葉が効き目があるということだ。
 そうした、半ば感情労働や場を読む力が発揮されることによって表現される「頭のいい人」というのは、「立派な人」「ちゃんとした大人」ということになる。だが、「立派な人」「ちゃんとした大人」でいることで、得ようとする信用や信頼は、果たして「頭のよさ」そのものを示すのだろうか、という疑問が湧いてくる。
 謙虚でいることは攻撃をしてこない人なので、安心安全である。この安心させてくれる人とは、評判のいい人であり、頼りになる人である。そんな人を馬鹿にしたり、腐したりはしない。一方、ただの「頭の良さげな人」はバカにされる場面もあるだろうし、陰で罵られたりすることもあるだろう。つまりは、裏でバカにされないような安全な「頭のいい人」が話す前に考えているということである。