2022-01-01から1年間の記事一覧
先端を行くカッコイイ現代的な相対主義哲学とのサヨナラ宣言である。 著者は相対主義なんて,そんなの哲学の本質じゃないじゃん,哲学の本義は普遍認識を目指す普遍洞察なわけなんだから,概念と論理を突き詰めなきゃ,という。近代市民社会は近代哲学がウラ…
亀山先生73歳の老いて見える人生の風景である。 新書本なのにスラスラとは読めない。亀山先生が今にして語る人生の告白だったり、悔恨だったりがとにかく語られ,読者は付き合わさせられる。亀山青年の刺さったままの棘や傷がまだまだ癒えることなく,むしろ…
あなたは,選択を迫られたことはあるだろうか。どーするんですか!どーしたらいいんですか!決めてくださいよ!と。 ビジネスにおける心理学・認知科学大全である本書は,シーナ・アイエンガーの名著「選択の科学」を思い出させる。シーナの来歴への興味も手…
昇太,一之輔,鶴瓶,宮治,志の輔。著者が「人気者」の落語家として選んだインタビュー集だ。この「人気者」というのが厄介だ。世間で知られているところの誰々というのが条件になるからだ。寄席や落語会に年に10回以上通うような人は相当なマニアだ。つ…
朴沙羅は,知っている。実は,全ては金(を稼ぐスキル)だ,と。 生い立ちの複雑さ,文化資本の重要性も含め,彼女の語ることは彼女自身に固有のものだ。だが,これを読む読者はキラキラした「子育てライフ in 北欧」を思い描くだろう。フィンランド社会の中…
和風・異世界冒険ファンタジーである。 読み手の我々の周りを漂う「せつなさ」の正体は何だろうか。本書を読み進める間,ずっと「せつなさ」がまとわりつく。そう,本書に限らず冒険譚とは,実はワクワクが全てではない。せつなさがセットなのだ。冒険のステ…
ライフ・ウィズ・コロナウィルス・ワールドである。 日々の繰り返しの中で,人はうだうだしたり,グズグズしたりしながら,毎日が過ぎていく。自分で選んだにせよ,感染症の流行のせいにしろ,ある日,状況の変化がやってきて,別な状況が始まってしまう。と…
社会生活を営む人間とは,ヒトであり,哺乳類である。フィンランドは,その哺乳類として人類が生殖や成長に伴って必要とされるケアや教育を,社会としてどうサポートするかにフォーカスしている。われわれは,必ず乳児期や幼児期を過ごす。哺乳類には,必然…
意思と才能がヒトのかたちをして立っている。いつも向田邦子の写真を見ると思う。黒目の力が強いのだ。そんな彼女の文章が愛されるのは,隅々まで神経が通っているからだ。揺るがせにせず,その言葉の置かれる場所やタイミングに意味と意図がある。そのこと…
何じゃコリャ。ドリーム・ストーリーじゃん。 まったく,不勉強にて失礼しました。知らなかったです。高知の成功物語。実は,高知が伸びている。バケたのだ。しかも偶然じゃない。戦略的に伸ばしたのだ。いやー,スゴい。 何がって,ボトムアップの県民運動…
戦争(がある世の中)の文学である。 毎年,ひとは生まれる。なので,平和な年も戦争の年も子どもは生まれる。平和な年も戦争の年も全ての学年生まれの子どもがいる。なので,後に戦争を語るのは,当時,「多感な少年少女時代を過ごした者」ばかりではない。…
隣近所のダークネスである。 では,財布とは何か。本来はお金を入れる袋だ。だから,ATMの横の壁に挿さっている金融機関の封筒だっていいはずで,借金を返すときにその金融機関の封筒が意味ありげに使われたりするように,財布の意味とはお金が入っている(…
ザ・主人公である。 自分の職場に白馬で出勤し馬上から上司に挨拶しちゃうのである(本来,それは挨拶とは言わない)。ザ・生意気である。実家が太すぎるのだ。気位の高い養母から「若さま」と呼ばれちゃう。そりゃあ,もう普通には育たないよ。まして,最上…
ときに科学はワクワクしないし,エモくない。実証・検証の繰り返しだし,事実を積み重ねていく気の遠くなるような作業だったりする。なので,結果をパッと見せてくれるような画期的な手品のような魔法のような何かに人は飛びつく。だって,楽ちんだし,すご…
あなたの「何か気持ちわりーなー」は大体あってる。その種明かし本である。 真顔でもっともらしいことを言っていたらウケちゃったのである。いや,そんなに真剣に受け取られても,と思ったに違いない。だが,先生とよばれ,権威になっていくと引っ込みがつか…
世間知らずの男の話である。 こんな可愛らしさとさえ言えそうな生真面目を背負っているピューリタン的世間知らずが,外務大臣を務めていたなんて信じられるだろうか。戯画的だ。お人好しかも知れないが融通の効かないバカでさえある。つまるところ,甘やかさ…
全ては疲労である。 なので,ホントは休めばいいのだが,ウィルスが機能しちゃってる人はそれができない。何がって,僕等にお馴染みのヘルペスウィルスが主役なわけだ。みんな,持ってるヘルペスウィルスだ。疲労とウィルスと抗体,そして遺伝子であり,結果…
Lo-D,Technics,OTTO,Aurex,日本marantz,DIATONE,山水,nakamichi,DENON,OPTONICA,AKAI,……。呪文ではない。かつて日本の電気メーカー各社が競って世に送り出したオーディオ・ブランドだ。大手電気メーカー系もあれば,独立系もある。かつて家電量販…
優秀な官僚に委ねてしまえば万事,上手くいくはず…。そんなことは誰も思わなくなって久しい今,かつての公務員制度改革には「労働市場で優秀な人材をいかに惹きつけるか」「良い政策実現のために,政治が持たない知見をどう補完するか」といった,人事政策の…
組合,寄合スペクタクルである。 互助組織,互恵団体は言うに及ばず,そのムラの中で権力が集中せず,納得と道理でモノゴトが決まっていくまで議を尽くす場は,日本社会の典型であり生き残りの知恵であった。そんな組合,寄合での話しだ。 登場するのは,戦…
説明用の資料をまとめようにも苦労する人がいる。せっかく作っても頓珍漢な中身にしかならない人がいる。この本は,そのことの本質を突いた。 なぜ,伝わらないのか。違う。伝える中身,本質があやふやだからだ。そもそも伝えたい気持ちが薄かったり,やらさ…
人生下り坂最高!(火野正平)の手前,まだまだ悩める吉本ばななである。 よしゃあいいのに,人生のあれやこれやを思い出す。そして,悔いたり寂しがったりする。かつて住んだそれぞれの場所でのヒリヒリする思い出やゾワゾワする落ち着かない危なかっしいア…
契約とは何か。概念や理屈ではなく,肌身として,このことがわかっている日本人が何人いるだろうか。落合博満とは,そうしたプロフェッショナルな側の人間だ。 監督・野村克也にとって打者・落合はどうしても打たれてしまう諦めの相手であり,理解不能だった…
ヤマザキマリは,ずっと安部公房を推している。 エッセイでも,TV番組でもだ。彼女にとって羅針盤となった安部公房の小説群は,彼女の人生の苦難を相対化してみせ,そして人間というものの存在について彼女の全身に電気が走るようにして焼きつけた。 そんな…
今ごろ,ジョブズかよ。そうなのだ。もはや,みんな知ってる教科書に載る偉人だ。エジソンやフォード一世と同格か,それ以上の存在だろう。今さらだ。 エピソードや伝記の類であれば,食傷気味だ。だが,この本の価値はそこじゃない。欠点だらけの人物だった…
暴力的なまでのモラハラ=パワハラやいじめに,どう対処するかを説いた本だ。それも具体的にだ。 強烈なモラハラを受けている時の体や心の変化をどう発見するか。そして,どう対処するか。それを,できそうもない方法やありえない手法で煙に巻くのではなく,…
商売における善とは何か。商人道徳とは何か。 コミュニティを大切にせよ。儲けは後からついて来る。夢を語り,ファンには直接,語りかけ,そして,副産物として生成されるコンテンツはフリーに,ファン同士が繋がりやすくなることに注力せよ。まさに「Don't …
ビジネス物知りおじさんになれる一冊である。いや,ビジネス物知りおじさんとお話し相手ができるようになる本だ。できることなら,そんなビジネス物知りおじさんが語る上手い話しは避けた方がいい。商売の本質はそんなところにはないからだ。なので,この本…
レベッカは勇敢である。 そして,彼女は冷静かつ正確に問題をとらえ,その一点に怒りを持ち続けている。その矛先は,こんな状況になってしまったアメリカについてである。こんな状況とは何か。嘘,出鱈目,インチキ,嘲笑,誤魔化しがまかり通る正義なき社会…
行政とは,見えにくい存在だと金井先生は言う。網羅する対象の範囲の広さとそれに応じた組織・機構,国と地方,政治と官僚や現場職員の関係など,複雑多岐に渡るし,興味関心なく関わりを持たないように生きようとすれば,最小限の接触にすることだって可能…