読書感想文「成瀬は信じた道をいく」宮島 未奈 (著)

 人格の形成とはいつ成されるのだろうか。
 持って生まれた性格や才能、能力が揃い「その人」らしさが形づくられ、他からもそう認識されるのはいつなんだろうか。何を言いたいのかと言えば、続刊であるこの本にもおいても、成瀬あかりはあいも変わらず天然・自然由来の成瀬あかりであった。
 成長し大学生になったが、大人びたり世間擦れしたりせず、無欲で無垢の聖性を帯びたまま、かえって行動半径が広がった成瀬あかりが際立っている。そして、今回、両親が明かされる。気になっていた読者も多いはずだ。あの成瀬の親とはいったい?と好奇心も高まっていたのだ。しかし、どうだ。「この親にしてこの子あり」も、「この子ならばこの親」の要素は全くない。父も母もフツーの人だし、世間のリミッターの内側で暮らしている人だ。
 子どもとは、授かりものである。天才で能力者ぶりを発揮し出したとき、親は自分がどうこうというよりも、神や天から持って生まれたものとして自分の子どもを見つめるしかない。預かっている、という感覚だ。
 そして僕らもヒヤヒヤしながら成瀬を見る。予測不能な側の一員として。