2023-12-01から1ヶ月間の記事一覧

読書感想文「陰陽師 烏天狗ノ巻」夢枕 獏 (著)

いつもながらの痛快・呪ファンタジーである。 なぜ、晴明は結果として人助けをするのか。頼まれごと、巡り合わせに仕方なく応じただけのことであり、本来、ゆるりゆるりと博雅と酒を呑んでいるだけなのだ。決して、自ら望んで火中の栗を拾に出かけいるわけで…

読書感想文「欧州戦争としてのウクライナ侵攻」鶴岡 路人 (著)

こんなにも単純でわかりやすい侵略行為の典型の事例に対し、当たり前の対抗措置を地域全体で当然にやれなくてどうする?という問いかけである。 あらためて、置かれている現実とは「抵抗しなければ祖国が無くなってしまう。将来が無くなってしまう」状態のこ…

読書感想文「喫茶おじさん」原田 ひ香 (著)

イーブンとは何か。イコールパートナーとは何か、である。 おじさんが拗(こじ)らせた話しである。あぁ、そうか、その類いか、そういう感じか。では、なぜ、拗(こじ)らせた後にしか、「話し」にならないのか。そういうもんだろ。でも、そこを面白がってい…

読書感想文「地図と拳」小川 哲 (著)

威と愚である。 作家にとって、満州とはよほど魅力的なテーマなのだとあらためて思い知らされる。確かに、ロマンと虚構だ。実態は怪しげで掴みようがなく、虚勢と思惑ばかりが充満している。刺激的であり創作意欲がわき、作家としては堪らないのだろう。 地…

読書感想文「実験の民主主義-トクヴィルの思想からデジタル、ファンダムへ」宇野 重規 (著), 若林 恵 (その他)

なぜ、ゴッホは郵便配達夫を描いたか。 仲良くしてくれたから。まぁ、そりゃそうだ。だが、近代における「郵便」という社会システムが持つ意味がある。郵便「制度」と言われるように、国家が個人をつなぐ装置である。ゴッホは孤独であっても、彼と知り合いや…