2022-05-01から1ヶ月間の記事一覧

読書感想文「人権と国家: 理念の力と国際政治の現実」筒井 清輝 (著)

国際人権規範について話しだ。いや,テーマとされるのは,なぜ,国家の支配者は,やがて自分の首が絞まるような国際人権に賛同し,批准した条約の遵守義務と向き合わざるを得なくなっちゃうような「空虚な約束のパラドックス」に陥ってしまうのか,だ。 それ…

読書感想文「裸の大地 第一部 狩りと漂泊 (裸の大地 第 1部)」角幡 唯介 (著)

ヤバイ人の話だ。 旅そのものの定義に内在する「戻る」という行為に,計画性や時間制約を嗅ぎ取り,さらに不自由さも一々感じちゃって,自身の感覚と自活による移動こそ追求対象だとして,ついにやっちゃう人が主人公なのだ。そんな理屈っぽいこと考えたとし…

読書感想文「メタ認知-あなたの頭はもっとよくなる」三宮 真智子 (著)

参ったなぁ。「頭がいい」とは,いま,ここまで客観的に定義づけられているのか。 「頭がいい」とは,頭の使い方を意識的,無意識的にせよ,わかってやっているということだ。それには,動機付けや感情といった非認知的な要素も深く関わっているので,ますま…

読書感想文「古本食堂」原田 ひ香 (著)

関取にぶん投げられる気分と言えば近いだろうか。回しを取られて空中に浮かぶ上がって振り回されるように物語の渦へ持っていかれる感じ。それが原田ひ香お馴染みの読後感だ。 現在の世の中のいるであろう市井の人々と,いまこの時点のトピックスを盛り込み,…

読書感想文「近江から日本史を読み直す」今谷 明(著)

近江を考えることは一つの厄介である。 琵琶湖を囲むすべての道が街道なのだ。東海道,中山道,北国街道,若狭街道,塩津街道。京の都に入る前に湖水を横目に,もしくは湖水の上を経由して一度,この地を行き来するのだ。当然,人々は多様で一筋縄ではいかな…