読書感想文「欧州戦争としてのウクライナ侵攻」鶴岡 路人 (著)

 こんなにも単純でわかりやすい侵略行為の典型の事例に対し、当たり前の対抗措置を地域全体で当然にやれなくてどうする?という問いかけである。
 あらためて、置かれている現実とは「抵抗しなければ祖国が無くなってしまう。将来が無くなってしまう」状態のことであり、「抵抗には犠牲が伴うが、抵抗しないことにも犠牲が伴う現実である」。いやいやそれどころじゃなく、「停戦とは、その時点での占領地域の、少なくとも一時的に固定化であ」って、「結局のところ、停戦のみでは平和はやって来ないのである」。占領開始後に大量殺戮による虐殺があることを考えれば、「停戦自体を目的とすることができなくなった」わけで、例えば、お互いの主義主張の落としどころがないとか、もう議論が入り混じって収拾がつかないということではないのだ。至極、単純な侵略なのだ。
 この2023年の年末、「支援疲れ」という言葉を見かけるようになったが、戦闘の継続への疑問は、権力を維持するため武威でもって国家を統制し続けようとするプーチンにこそ投げかけるべきであって、「平和は大事ですよね」とわかったふうなことを言ってんじゃねぇよ、となる。
 当然の安全保障でもって対抗するしかない。ケンカはつまらないかも知れないが、足を踏んづけてくるヤツには、その足を退かせなければいけない。