中小企業経営者の皆さんは,これはハッキリさせないと,いかんのじゃないですか。 <EVベンチャー・ゼロスポーツ破産>


 これは一体どういうことなのだろうと,一報を聞いてもピンと来なかった。

 電気自動車(EV)ベンチャーのゼロスポーツ(岐阜県各務原市)は1日、岐阜地裁に破産を申請すると発表した。負債額は約11億8000万円。同社は昨年8月、日本郵政グループの郵便事業会社との間で集配業務用のEV1030台を納入する契約を約35億円で締結。量産を開始したが、納期遅れを理由に今年1月に契約を解除されていた。(2011/03/01-19:16)


時事ドットコム:EVの「ゼロスポーツ」破産へ=郵便会社から契約解除


納期遅れで破産?どこまでの契約不履行なのだろう。そう思っていたら,詳細の報道があった。

ゼロスポーツは2010年8月、日本郵便から集配用EVとして1030台約35億円の受注をしたことで注目された。契約では1月に20台、2月末に10台の計30台を本年度中に、その後、来年度末までに残りの1000台を納品する予定だった。しかし、1月21日の最初の納期に車両が間に合わず、日本郵便から契約解除の通知および契約金の2割である約7億円が違約金として発生する通告があった。

報告を受けたメインバンクは2月に運転資金の口座を凍結、月末の給与の支払および取引先への支払いが滞ったゼロスポーツは、日本郵便からの違約金請求の可能性がある民事再生の道をあきらめ、破産申請による倒産の道を選んだ。

なぜ、2001年からコンバージョンEVの制作経験を持ち、実証実験として日本郵便に合計10台のEVを納品実績があるゼロスポーツが1月の20台納品に間に合わなかったのか。周辺取材により明らかにしたい。

昨年8月の日本郵便からの発注1030台はスバル『サンバー』をベースに、集配用途に合うように現場の声を反映させた言わば日本郵便とゼロスポーツの共同開発のEVだった。

ところが9月、スバルは2011年度いっぱいでベース車両となっているサンバーの生産を停止し、ダイハツ車両のOEMに切り替える方針が判明する。年間4万台以上生産されるサンバーの供給は今後1年は続き、契約である2011年度内1030台のサンバーベース集配車両の導入には支障はないが、近い将来のベース車両変更が既定路線となった。

ここで日本郵便とゼロスポーツの間にあるアイディアが浮かび上がる。日本郵便側として、荷台下にエンジン(モーター)があるサンバーはEVに改造した場合にどうしても荷台が20cmほど上昇してしまい荷室のスペースが犠牲になる。一方で、ダイハツハイゼット』はフロントエンジンのためEV改造による荷室スペース減少がない。またゼロスポーツにしても将来の車両変更による開発のやり直しを考えると、サンバーをあきらめてハイゼットベースでの1030台納品に傾いた。両者の思惑が一致し、ベース車両の変更と開発期間延長のため2011年1月と2月納品の次年度繰越に合意した。

しかし、日本郵便側で異変が起こる。契約変更の手続きをすすめるうちに重大なミスを発見したのだ。ゼロスポーツとの契約は随意契約である。日本郵政グループはいまだ完全民営化されておらず、随意契約の条件のひとつとして実証実験の実施を義務付けている。じっさい、ゼロスポーツと日本郵便は2009年度に2台、2010年度に8台の実証車両を走らせており、随時契約の条件を満たしていたのだが、サンバーからハイゼットへの車両変更が条件外になるおそれがわかった。

日本郵政グループの随意契約といえば「かんぽの宿一括売却」騒動が思い出される。日本郵便ベンチャー企業のために危ない橋を渡ることを避け、ゼロスポーツに対してベース車両の変更と30台の納品の繰越を認めないという通知をしたのが1月18日。それは1月納品期限である21日のわずか3日前であった。

奇しくも日本郵便はこの期間、業績悪化が深刻なことが明らかになり、多方面でのリストラも検討されている。3000台の車両をEVに置き換えるというプロジェクトも最初のステップでつまずき、大幅に計画は見直されるであろう。

ゼロスポーツは、はしごを外されたハイゼットベースの車両開発も虚しく、大口契約を背景に集めた運転資金は口座ごと凍結され破産に至る。しかし、同じくEVベンチャーナノオプトニクス・エナジー社が、1日付で解雇されたゼロスポーツ社員の雇用に名乗りをあげている。EVベンチャーの魂は受け継がれることになるのだろうか。


《三浦和也》


破産ゼロスポーツが郵便EVを納品できなかった本当の理由 | レスポンス自動車ニュース(Response.jp)


スバル・サンバーは,この先ベース車両として利用できなくなり荷室も制約される。それならば,いっそのことハイゼットにしよう,とした。これは当初の契約とは内容は異なるだろうが,契約条件をより充実させるこの変更が,解約に至ったことのようだ。

日本郵便事業は、ゼロスポーツが自己破産を申請したことに関連して「日本郵便がゼロスポーツに契約の仕様変更の要請をした事実は無い」とのコメントを発表した。

ゼロスポーツは、自己破産の原因となった日本郵便からの電気自動車(EV)の契約解除について「日本郵便から車種の変更を求められ、(契約よりも)納期が遅れることになった」と説明。

これに対して日本郵便は、ゼロスポーツ側から昨年10月20日、「契約物品の納入不能に関する報告」という文書が届けられ、仕様に定められた車両が納入できなくなったとの報告があり、他社のボディで納入するとの提案があったとして、車種の変更はゼロスポーツ側からの提案だったと反論。

日本郵便は「他社のボディにすることは、新たな開発プロセスで別の車種として開発し、型式認定も新たに取得することになるもので、全く別の契約であり、契約変更というものではない。納入期限や品質についても何の保証もないため、リスクも大きい」と判断、今年1月17日にゼロスポーツの提案は、受け入れられないとして文書で回答し、契約解除を通知したとしている。


《編集部》


日本郵便、ゼロスポーツ破産で反論「車種変更はゼロスポーツ側の意向」 | レスポンス自動車ニュース(Response.jp)


車種の変更をどちらが言い出したかともかく,長期的には双方にとって利益になるはずの,その変更が契約解除に至らねばならない事由なのだそうだ。
 契約条件としてはそうなのだろうが,この場合の実証実験の実施のために,納品を猶予するなどの措置をとることはできなかったのだろうか。破産させるほどの瑕疵が実はあるということなのだろうか。どなたか教えていただきたい。私はわからない。


 全国の中小企業経営者のみなさんは,新規事業に乗り出してビッグチャンスを得た!と思い,その中で改善に取り組んだら,こんな始末にあうのでは,なんともやりきれない思いをされるのではなかろうか。
 どちらにどう非があるのかもそうだが,では,どうすれば良かったのかハッキリさせる必要があるんじゃなかろうか。単純にベンチャー企業が納品条件を変更しようとして解約になって破産しました,で終わってしまっては,何の教訓にも経験にもならず,未来に向けたチャレンジの芽を摘むだけに終わってしまいかねない。