読書感想文「新・哲学入門」竹田 青嗣 (著)

 先端を行くカッコイイ現代的な相対主義哲学とのサヨナラ宣言である。
 著者は相対主義なんて,そんなの哲学の本質じゃないじゃん,哲学の本義は普遍認識を目指す普遍洞察なわけなんだから,概念と論理を突き詰めなきゃ,という。近代市民社会は近代哲学がウラ書きした訳で,大戦争という近代社会の躓きがあったからと言って,近代哲学そのものの否定に走った現代哲学(独断論相対主義)の指向性について,何やってんだ,本来の近代哲学の「原理」から外れてんじゃんと批判すべきだっただろ,現代哲学はむしろ現実に迎合してんじゃん,何言ってんじゃんよ,と言うのだ。
 「価値観の多様性」だからと言ってどんな制度が実装されたっていいわけじゃねーよ。じゃあ絶対専制社会を並列に置いて肯定することがあり得るか?そーじゃねーだろーよ。「自由な社会」があるからこそ,価値観の多様性が担保されるんだろ,とね。ポップでオシャレなポストモダン思想が流行したって構わない。だが,それは近代哲学がかたちづくった万人に自由と価値の多様性が保証する社会システムあってこそだ。
 哲学の本だ,言葉と理屈だから繰り返し読み通すことが求められる。だが,第1章を何度もめくることで著者の主張はわかる。暴力とマネーが世界を支配しようする現代への危機意識なのだ。ちゃんとしよーぜ。ちゃんと考えよーぜ。