2022-01-01から1年間の記事一覧
国際人権規範について話しだ。いや,テーマとされるのは,なぜ,国家の支配者は,やがて自分の首が絞まるような国際人権に賛同し,批准した条約の遵守義務と向き合わざるを得なくなっちゃうような「空虚な約束のパラドックス」に陥ってしまうのか,だ。 それ…
ヤバイ人の話だ。 旅そのものの定義に内在する「戻る」という行為に,計画性や時間制約を嗅ぎ取り,さらに不自由さも一々感じちゃって,自身の感覚と自活による移動こそ追求対象だとして,ついにやっちゃう人が主人公なのだ。そんな理屈っぽいこと考えたとし…
参ったなぁ。「頭がいい」とは,いま,ここまで客観的に定義づけられているのか。 「頭がいい」とは,頭の使い方を意識的,無意識的にせよ,わかってやっているということだ。それには,動機付けや感情といった非認知的な要素も深く関わっているので,ますま…
関取にぶん投げられる気分と言えば近いだろうか。回しを取られて空中に浮かぶ上がって振り回されるように物語の渦へ持っていかれる感じ。それが原田ひ香お馴染みの読後感だ。 現在の世の中のいるであろう市井の人々と,いまこの時点のトピックスを盛り込み,…
近江を考えることは一つの厄介である。 琵琶湖を囲むすべての道が街道なのだ。東海道,中山道,北国街道,若狭街道,塩津街道。京の都に入る前に湖水を横目に,もしくは湖水の上を経由して一度,この地を行き来するのだ。当然,人々は多様で一筋縄ではいかな…
いま,子どもが難しい。 いや,子どもは子どもなので放っておいたって子どもなのだが,子どもの親でいること,子どものいる家庭,子どものいる社会を築いていくのが難しいのだ。まして,学校はその存在からしてずっと難しいままだ。 なぜか。子どもと向き合…
筋肉実況中継・ジェンダー内面葛藤こじらせ小説である。 目指した場所が自由をもたらしてくれると意気込んだはずなのに,さらに一歩踏み込んでしまったそこは「クラシック」な価値観に支配されていた。でも,目標期限を決め,そこまでは頑張ることにしたのだ…
本を読むと,その本の話しを誰かとしたくなる。あまり余って読書会なんてものをやりだす。 あのテレビ番組「100分de名著」のアフタートークである。伊集院光が,どうしても勢いづいて,案内役の3人と語り出してしまったのだ。テレビ番組では,まっさらな人…
源流に遡って考えることの大事さを,あらためて知る好著である。 どっかで聞き齧ったような生半端な知識を,さもさもわかったふうに使ってしまうことの帰結が,いまの世の中の始末じゃなかろうか。そんな,いきりたった半可通が威勢のいいことを言い,それも…
生ける伝説・中野善壽の初の著書。 ゆるりと竜が空を駆けるように生きる中野の言葉に,はぁーと感嘆の吐息がもれてしまう読者が多いだろうことは,容易に想像がつく。 中野の価値と意味とは,個としての存在である。学閥,閨閥,出身地,遺産など自分をつく…
ストーリー仕立ての紛争処理の実務をテーマとした行政法理解本である。 行政法を学ぶとは数多(あまた)ある個別行政法を網羅することではなく,行政作用法や行政救済法を学ぶことを意味するわけで,行政手続法,行政不服審査法,行政事件訴訟法の3法を理解…
お花畑を闊歩する幼児の天真爛漫さのような理想状態を描き,そこから現実へアプローチする理念的な物言いによって,現実の事象とその対応策へ反論する「リベラリズム」及び「リベラリスト」から本書への感想を,ぜひとも聞きたいものだ。 アメリカのリベラリ…
「ほんとうは面白いウイルスの世界」であり「●●の知らないウイルスの世界」である。 目には見えないが周りや体内にいつも存在し,何なら無くては困る存在だったりもするウイルス。今は,定時のニュースでその大活躍が報じられているが,昨日今日,現れたわけ…
「東京コント」ストーリーである。もしくは,バナナマンや東京03とともに時代を作ってきた男のパックヤード譚である。 それにしても貴重なキーワードが飛び出す。「お笑い自意識」。笑いを生み出す目線とその目線を持つ自分の立ち位置を一言で表した言葉だ。…
未来は作れる,という話しだ。しかも,国家レベルの。 これを読んで,元気が湧いて来ない人がいるのだろうか。読んでいる途中から,ムクムクと内側から起き上がってくる意欲。目の前が自然と明るくなって,希望を感じられるはずだ。 あらゆる業種で,蓄積さ…
さて,どう読むか。没後10年,立川談志の原点を辿り,1953(昭和28)年の社会風俗を知る資料として読むか。当時,まだ前座修行中の何者でもないような一人の若者の悶え,鬱屈,躊躇い,嘆きの生々しさ,熱さを描写した文学として読むか。 確かに,前座・柳家…
ただの日本特殊論じゃないぞ。 日本社会がある以上,それを構成ならしめている構造がある。夫婦,兄弟,地域社会といった小さな集団社会から,大きな集団社会まで,その構造に特徴があるから,社会に特徴が現れる。集団や社会に馴染めないな,と思う人は,今…
原著のタイトルは「The 100-Year Life」。「100歳人生」だと,百寿万歳!な意味になっちゃうだろうから本屋に置かれる棚も変わってしまうので,タイトル変更もやむ無しだろう。 どうキャリア開発するか?これを読んで前向きになる人もいるだろうが,求められ…
時代の空気が触れるようにわかる資料である。当代切っての名人上手を追ってばかりいては噺家の世界の様子が窺い知れない。噺家として上手い,人気者というのとは別に,実力者というのがいる。その世界で上の人たちに可愛がられた人たちだ。上の人たちをしく…
意思や欲ではなく,どうしようもなく手が動き体を動き,モノを言いだしてしまう情動。これこそ利他の根っ子である。 大きな厄災の後,我々は我が身を顧みる。大きな災害,経済危機,そしてパンデミック。みんなが皆んな,いま,薄々気づきながらやっているの…
みなさんお馴染み,世界最凶の日本中世がテーマの野蛮ワールド解説本である。 紹介される中世が,ちょっとヤバいのだ。アナーキックで瞬間沸騰型にキレて殺しまくり,暴虐非道の即殺人社会。まぁ,そうなんだけど,現代にチラチラ地続きなのだ。多様な言い分…
ルポライター・井上ひさしである。 間違いなくボローニャへ行ってみたいと思わせる井上の筆を称えるべきなのだろうが,イタリアの地方都市を動かす気質やポリシーの魅力を存分に味合わせてくれる。街のエンジンである人々の気概と行動,そして街の歴史を残し…