読書感想文「変異する資本主義」中野剛志(著)

 お花畑を闊歩する幼児の天真爛漫さのような理想状態を描き,そこから現実へアプローチする理念的な物言いによって,現実の事象とその対応策へ反論する「リベラリズム」及び「リベラリスト」から本書への感想を,ぜひとも聞きたいものだ。
 アメリカのリベラリズムは失敗し,新自由主義は修正が行われている。いま,アメリカ政治の中心は,リアリズムであり,積極財政である。それは,グローバリゼーションから経済ナショナリズムへの転換でもある。すぐに目を覚ますべきだ。
 腹を据えた安全保障を目指す経済政策が必要なのだ。そのために,積極財政を取らせ,経済へ介入させるための「大きな政府」を実現させるに足る信用・信任のある政府に,自由なだけの貿易は本当に正しいのか?と言わせなければならない。
 古臭い知識を振り回す連中には,勉強のやり直しか退場を勧めたい。デフレに浸っている間に,世界は新たなコーナーを曲がったのだ。そのことをこんなにもコンパクトにまとめてくださったのだ。著者には感謝したい。未読者よ,急ぎポチるのだ。
 いいか,これはロシアによるウクライナ侵攻の前の著作なのだぞ。