読書感想文「最悪の予感: パンデミックとの戦い」マイケル・ルイス (著)

 全ての保健所職員よ,必読だ。そして,膝が抜け落ちるだろう。ワハハ!私は泣き笑いの半べそになりながら,これを読んだ。「クソだ。全くクソだ」。ページを捲るたびにいちいち罵詈雑言が口をつく。「何てことだ!アメリカの感染爆発の正体は,クソみたいな連邦政府,クソの集まりの州政府,意気地なしのCDC,蔓延る無気力と官僚主義じゃないか」と。情けなく,そして胸糞悪い。システムが劣化している。それは公衆衛生だけじゃない。社会や組織のシステムが,だ。トランプがクソか。そうだろう。だが,染み込んだ事勿れ主義が最もクソだ。
 それでも立ち上がるのは,科学力と強靭な意志を持った個人の存在だ。アメリカは断然,微生物学研究の世界トップだ。そこに篤志家が数えきれない資金を投入し,才能ある人たちが互いに繋がり出すことで解決に向かっていく。決して単純ではないのだが。
 貴重な言葉を本書から拾っておきたい。「知識の源としては,民間企業はあまりに効率が悪い」。「有望な研究分野が開けても,会社が頓挫するとともに,成果が水の泡と消えてしまう」。「金銭的な野心が,科学と進歩を妨げている」。
 間違いなく,映画化決定だろう。そして,僕らは震えながらスクリーンを見ることになる。地獄の釜は開いたばかりだ。