読書感想文「ぜんぶ、すてれば」中野 善壽 (著)

 生ける伝説・中野善壽の初の著書。
 ゆるりと竜が空を駆けるように生きる中野の言葉に,はぁーと感嘆の吐息がもれてしまう読者が多いだろうことは,容易に想像がつく。
 中野の価値と意味とは,個としての存在である。学閥,閨閥,出身地,遺産など自分をつくっていると思っているものを一々ありがたがって,それに寄り掛かって暮らしている者へ,そんなことより,あなたはどうしたいの?あなたはどう思うの?あなたとは?を問う。そのことに耐えられない者が多いはずだ。みんな自分に自信がないのだ。だから,執着するのだ。教わって来たことに。これまでやって来たことに。身につけたことに。
 努力はするが,成るようにしかならない。力んだって仕方がない。足掻いたって始まらない。新しいことに,未来に賭ける。ただ,自ら動く前に観察する。これと思えるものに当たったらシメたもの。そこはじっくり。ただし,自分のスタイルはドンドン変える。
 手放すからこそ,新しいものが入ってくる。恐るな。前を向け。新しい方,興味の向く方,そっちが前だ。