客観評価の低さが生むオンリー・ユー


 内田先生のブログのエントリーをメモ。
 相手との狭い日常の時空において,自分自身の相対的な位置の低さを意識しはじめるとアイデンティティを保つことが困難になる,ということか。
 その意味では,ある種の閨閥にもとずく関係構築というのが,無難なのであろう。それが先人の知恵というものか。

つまり、「誰が見てもすばらしい、みんなが羨む配偶者」を得た人間は、その代償として、「私がいなくても、この人の才能や美質は引き続き高く評価されるであろう」という確信を埋め込まれる。
それは「私は存在しなくてもいいのだ」というアイデンティティの危機を遂行的な結論として呼び込むことになるのである。
それゆえ、古来、配偶者の選択については、「できることなら、誰も羨まない人間を選ぶ方が無難である」ということがひそかな人類学的ルールとなっているのである。
もちろん、そのようなことは決して公言されない。


配偶者の条件 (内田樹の研究室)