読書感想文「「法の支配」とは何か――行政法入門 」大浜 啓吉 (著)

 源流に遡って考えることの大事さを,あらためて知る好著である。
 どっかで聞き齧ったような生半端な知識を,さもさもわかったふうに使ってしまうことの帰結が,いまの世の中の始末じゃなかろうか。そんな,いきりたった半可通が威勢のいいことを言い,それもヨシとする物分かりの良過ぎの風潮がダメにした物事が多過ぎやしないかね,とも思う。
 本書が著すのは,行政法とは何か。法治国家とは何か。そして,法治国家と「法の支配」とは何が違い,なぜ,それは生まれてきたのか。それから「法の支配」と行政法の関係であり,新自由主義による「国民内閣制」論への批判が綴られる。
 雑誌連載をもとにしてるので言葉は平易だが,情報量が多く,使われる単語も決して易しくはない。だが,何度でも手に取り,蛍光ペンを引き,それでもまた読むことを繰り返し,血肉とすべく理解につなげたくなるし,私はそうするだろう。
 法律や公的な仕事に従事する方はもちろん,マスコミの方などにも実は必要とされるベーシックな知識だと思うよ。