草むしり 旧・Column Kazuhiro 2000

 草むしりが好きだ。妙な書き出しなのだが,自分の感覚を他に上手く表現できないので,こうストレートに書いてみた。物心ついた頃からのマンション住まいのアスファルト舗装育ちの人も世の中に結構多くなったようなので,庭の草むしりを一度もしたことがない人もいるだろう。また,当たり前に庭を見て育ったけど,草むしりなんてしたことないわよ,という方も案外多いのかもしれない。
 この夏,そんな貴方にも草むしりは,オススメである。第一に,草むしりは発見の連続である。草むしりは,庭に本来あって欲しいと思わざる植物を除去する作業である。そうなると,庭と向き合いねらいを付けて,エイヤッと抜き取るのだが,とった矢先に眼球内の網膜には写っていたのだろうけども,認識されていなかった抜き去るべき植物が目に飛び込んでくる。この瞬間,「あぁ」と情けない表情になる。と,この瞬間,徒労感に襲われるのだけども,この徒労感の実感が第二のポイントである。草むしりはあくまで,むしりである。地下茎及びばらまかれた種子に対して無防備なままである。「こんなことをしたって,どうせ」の世界である。地面を掘削したり,薬をまいたりしないので地球にやさしいと言えば,そうなるが,人生においてどうせ味わう徒労感を,自分の手で実感しておくのも悪くないじゃないか。
 最後に,付け加えておく。草むしりは単純である。この作業の繰り返しの中で,ムクムクとイマジネーションが湧いてくる。そうクリエイティブな行為なのだ。
 たかだか草むしりなのだが。 
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