今年に入って,朝日新聞が「ロストジェネレーション」キャンペーンを展開している。
ロストジェネレーションとは,「失われた10年」に社会に出た25〜35歳を指し,正規雇用から締め出された層をいうのだそうだ。「失われた」「正規」「締め出された」と,表現の気持ち悪さを感じずにいられないのだけれど,今日は,このキャンペーンで登場する別な言葉について書く。
イギリス
イギリスは,「ニート」(教育も職業訓練も受けていない無業者)という言葉の発祥地だ。この国では,ニートの中心は貧困層で学校についていけない若者たち。日本のように高学歴なのに親の臑をかじり続けるようなイメージはない。
彼らを労働市場にどう取り込むか。行政の取組みとは別に,注目されているのが社会的企業で,利益よりも社会貢献を重視する。
一般企業が投資しない貧困地域に,あえて拠点を置く社会的企業も多く,地域の雇用創出に果たす役割は大きい。
社会的企業 日本でもチャンス
オックフフォード大 サイード・ビジネススクール ロウィーナ・ヤングさん 35社会的企業は,ブレア首相が97年,就任直後の演説で重要性を指摘し,広く知られるようになった。英国に5万5千あるといわれる。利益の大半は社会的使命のために還元される点で,商業的企業とは異なる。麻薬常用者に教育を与えたり,失業者を雇って職業訓練したりする例もある。
朝日新聞 2007年1月7日 「ロストジェネーション 25〜35歳 彼ら,海の向こうにも」
役所ではない。学校でもない。選挙を経て当選した議員でもない。なのに,福祉や教育,貧困といった社会の難題に挑むカイシャが続々と誕生している。一般企業とは違うので,「社会的企業」と呼ばれる。活動を続けるには,利益を上げねばならない。でも,お金だけが目的ではないから,普通の会社勤めでは味わえない使命感と達成感が得られる。
社会的企業
福祉や雇用,環境,貧困や地域再生など社会性の高い課題の解決を目指す新タイプの事業体。社会的起業ともいう。欧米で台頭しており,日本でも株式会社,事業型NPO法人などの形態で広がりつつある。
朝日新聞 2007年2月17日 「ロストジェネーション 25〜35歳 使命感求めて 「社会的企業」福祉・教育・貧困に挑む」
どうもに,違和感があるのだ。
「社会的企業」などというボンヤリした表現では,アントレプレナーシップや起業マインドのもとに,社会サービスを事業として展開する主体が伝わらない。そこにザラつきを感じる。ここはやはり,「社会起業家」と呼ぼう。
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著者の町田洋次さんが,自身のブログでも語っている。
社会起業家 ? 社会的起業家 ?
98年から99年ごろ、イギリスでつくられたコンセプト「ソーシャル・アントレプレナー」を日本語に訳すとき、どちらにするのか、ずいぶん考えたことがあった。ソーシャル・イノベーション、社会的革新、社会革新、ソーシャル・キャピタル、社会的資本、社会資本。。。みな同じである。
私も先日,夕張の村上医師について書いたが,町田さんは,社会起業家としての夕張の村上医師に高い期待を寄せている。「社会的企業」では,村上医師を表現していることにはならない。
私の違和感はそこにある。