身近にある大量死


 「たくさんのふしぎ 2007年3月号」が,「消えたエゾシロチョウ」と題した衝撃のルポを掲載している。

北海道の海岸に広がる草原で、満開の花だと思ったのは、エゾノコリンゴの木にびっしりととまったエゾシロチョウでした。エゾシロチョウはこの木の葉を幼虫のエサにして年々増え続けていきます。ところがある年、葉を食べつくされて枯れてしまわないように、エゾノコリンゴも見事な作戦をたてました。こうして観察を続けた6年目の春、突然エゾシロチョウの幼虫は消えてしまったのです……。


「たくさんのふしぎ 2007年3月号」


種明かしはいかんが,結論だけは引用する。

私は友人たちの手を借りて幼虫の数をかぞえました。それから全体の数を推定したところ,このまでいけばチョウの数は,軽く10万をこえるだろうと思われました。
 ところがそれから10日後,仕事が忙しかったため久しぶりに訪ねた草原に,私は呆然と立ちつくしました。あのエゾシロチョウの幼虫の大集団が,一匹残らず死に絶えてしまっていたのです。


「たくさんのふしぎ 2007年3月号」 p.38


実は,その犯人は明かされない。エゾノコリンゴの新たな戦略によるものなのか,ウィルスなのか,はたまた,…。ただ,著者の次の言葉がとても示唆に富む。


 このことがあってから私は,自然というのは,ほんとうは私たちの知らないところで,こんなことをつねにくりかえしているのかもしれない,そんなふうに思うようになりました。


「たくさんのふしぎ 2007年3月号」 p.38


 丁度一年前のニュースを思い出す。

 4月に入ってから北海道の道央・道北地域でスズメの大量死が相次ぎ、12日までに上川支庁だけで計760羽の死骸が発見された。


北海道でスズメ、東京でハトがそれぞれ大量死【2006年4月13日】


 今もって,スズメがなぜ大量死したのか明らかではない。それにスズメは少ないままだ。




<追記>エゾシロチョウの移動について

 観察していてまず気づいたことは,エゾシロチョウは,あまり移動しないチョウだということです。移動したとしてもせいぜい100メートル程度。ところがとつぜん500メートル,1キロ,ときには5キロも離れた場所に集団発生することがありました。どうしてなのか,理由は不明でした。
 ある日列車に乗っていて,窓ガラスにしがみついているエゾシロチョウを見つけて,はたとその理由に思いあたりました。
 エゾシロチョウを観察しての帰り道,林道を通る私の車のフロントガラスにも,しばしばエゾシロチョウがしがみついていました。でも,たくさん飛んでいるなかを通ったのだからあたり前だと,あまり気にもとめていなかったのです。
 しかし,考えてみれば,それまでエゾシロチョウが,とつぜん集団発生するのは,いずれも線路ぞいが,林道わきでした。
 そうです。エゾシロチョウは,列車や車を利用して移動していたのです。


「たくさんのふしぎ 2007年3月号」 p.32〜33

らくちん,エゾシロチョウ。