日経ヴェリタス 2008.4.13号には,モノラインがらみの記事が2つ掲載されていた。一つは p.59「サブプライムの余波,ここにも 米地方債めぐり訴訟頻発 競売不成立で個人投資家に損害」。もう一つは,p.66「されどモノラインに意義 土井丈朗 慶応大学健在学部准教授」。一つ目の記事がサブプライムとモノラインの関係を整理してくれている。
サブプライム危機で資金繰りが悪化した投資銀行はARSを引受ける余裕がなくなった。
「サブプライムの余波,ここにも 米地方債めぐり訴訟頻発 競売不成立で個人投資家に損害」日経ヴェリタス 2008.4.13号
このARSとは,オークション・レート・セキュリティーズのことで,
ARSとは地方自治体や病院などが発行する債券。7日,28日,35日程度の頻度で実施されるオークションによって変動する。
(略)
ARSの流通残高は約3600億ドル(約36兆円)。半分が地方自治体。残りが病院や医療機関による発行といわれている。
「サブプライムの余波,ここにも 米地方債めぐり訴訟頻発 競売不成立で個人投資家に損害」日経ヴェリタス 2008.4.13号
これまでは,
ARSのオークションは,従来は投資家の買いが入らなくても,仕切り役の投資銀行が自己勘定で売れ残りを引き受けて成立させていた。
「サブプライムの余波,ここにも 米地方債めぐり訴訟頻発 競売不成立で個人投資家に損害」日経ヴェリタス 2008.4.13号
しかし,冒頭に引用したように,投資銀行に「余裕がなくなった」ため,
多くのオークションが「不成立」に終わり,規定で金利が自動的に引き上げられる事態が続出した。
「サブプライムの余波,ここにも 米地方債めぐり訴訟頻発 競売不成立で個人投資家に損害」日経ヴェリタス 2008.4.13号
この結果,タイトルのとおり「訴訟頻発」となっているのだそうだ。ここまでの流れを見ると,やはり,モノラインそのものは自己資本不足に陥っているわけだが,それはアメリカ金融界全体の資金繰り悪化の影響であり,地方債そのものの劣化ではない。また,槍玉にあがっている格付け会社ももともとのモノラインへの評価に誤りがあったわけではないのだろう。このことは,
地方債を米連邦政府ではなく民間金融機関が保証する仕組みを聞き,実に合理的だと感じた。
(略)
モノラインの審査によって自治体の財政は規律付けられ,モノラインも安易に債務保証しないことで自らの格付けを維持できる。理論的に考えれば誘因が両立する仕組みである。
と言われるような「仕組みの良さ」にあるからと言えそうだ。さらに,このモノラインも格付け会社によってクロスチェックがなされることになり健全性が高まるというわけだ。これの背景は,過去にアメリカの自治体の債務不履行があったことに由来するのだろう。
このことについては,2004年10月のレポートになるが「金融保証(モノライン)保険業界の概要」に詳しい。この件で,wikipediaを調べるよりも,ずいぶんとわかりやすい。