「型」を体得するということ。


 インタビュー起こしを中心にまとめられた落語家の本を手に取り,そのまま買ってしまった。5人の落語家(柳家小三治三遊亭円丈,林屋正蔵春風亭昇太立川志らく)が,それぞれ好きな人たちであり,楽しんで読むことが出来た。
 この本の「あとがき」に,こうある。

 しかし,どうだろう。いまの社会を見回せば,若者の挙動ばかりが目に余るわけではない。ときに,それ以上のなんとも恥知らずな中高年の姿をしばしば目にするではないか。「修業」は若者や新人だけに適用されるものでもないだろう。いまや,年齢も時期も選ばないのではないだろうか。つまり,新スタートであれ,再スタートであれ,なにかを志した時点で覚悟として始める「心の研修」といっていい。


p.240 あとがき 「5人の落語家が語る ザ・前座修業」 稲田和浩・守田梢路


修行とは何か。とりわけ,芸人修行の師匠の下についての理不尽なことも多い修業時代とは何か。生活や態度,立ち居振る舞いの「型」を身についてしまうことで,やがて「師匠」と呼ばれることとなるその時に,「師匠」たるよう生きていけるための時間なのだ。そのため「型」について,「守・破・離」していくことが求められる。
 この「型」とは何かを,考えたのが,昇太であり,志らくだ。彼らの合理性は,修業で身につけるべき「型」の本質を考え抜いていたこと,逆を言えば,彼らが求めている「落語をしたい」に近づくための方法を考えてのことだったと言えるだろう。
 インタビュー以外の解説も詳しく,落語ファンにはお勧めの一冊だ。


5人の落語家が語る ザ・前座修業 (生活人新書)

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