読書感想文「好日日記―季節のように生きる」森下 典子 (著)

 アフター・フォーティ・イヤーズ。茶道を始めた女子大生は,その後,どうなったか?答えは,どうにも,ならなかった。いや,ルポライター・コラムニストとして,地位を築いた。亡父を見送り,老いた母や叔母と年中行事を過ごすようになった。そして,お茶を始めて25年後に書いた本「日日是好日」が,映画化された。自身の役は黒木華。師匠の役は樹木希林である。なんという師匠孝行!大変な変化である。
 しかし,この40年後の女子大生の逡巡,戸惑い,自信のなさ,気後れはどうだ。素直さ,か。誰もが,自分の中に中二の頃の自分を押しとどめているのと同様に,点前座に座る自分自身が,初心者のマインドのままであることを吐露している。リトル・ホンダは,ACミランに行け,と言ってくれて本田圭佑は決断したが,師匠・武田先生が「お茶を教えてごらんなさい」と言われても,著者は武田先生の一生徒のままであった。
 時間は不可逆である。だが,ひと月ひと月の時候は,巡る。好著「日日是好日」で描いたときのまま。


好日日記―季節のように生きる

好日日記―季節のように生きる

日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ (新潮文庫)

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