読書感想文「一切なりゆき」樹木 希林 (著)

 樹木希林という時代を成した人を惜しんで編まれた一冊である。インタビューを中心に,これだけの言葉を残した「この人とは一体?」と興味が尽きぬゆえ,こうした本も出てくるのだろう。では,何が樹木希林とほかの人を分けるのか?それは,自分自身と周囲の人を俯瞰で見るクセがついている,と自ら語っている。俯瞰で見ることを覚えたときに,「どんな仕事でもこれができれば,生き残れるなと感じましたね」と。つまり,樹木希林とは樹木希林をプレイしている自分が常に見えており,その演出・脚本も樹木希林だと言うことだ。そう,僕らは,天然の樹木希林は何一つ見ておらず,本人によって作られた樹木希林を見せられてきたのだ。そんなことをやれる人が一流じゃないわけないだろう。何という逆語だろう「一切なりゆき」。結果を出せることが見えていて「なりゆき」か?
 圧巻は,巻末の娘・内田也哉子による喪主代理の挨拶である。この本,樹木希林の言葉を読まず,この挨拶文のためだけに代金を支払う価値があるよ。すげー母娘だ。