読書感想文「へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々」鹿子 裕文 (著)

 職業,いや違うな,生き方としての介護。それは,パンキッシュでロケンローなのだ。半端な覚悟で迷い込んじゃいけない。下村恵美子を見よ。誰もが手を焼く「とてつもないばあさま」がいると聞くと,胸が高鳴り,その顔を拝まなければ気が済まなくなる社会福祉士。困難に直面してもケ・セラ・セラが口をつく。変態かよ。村瀬孝生を見よ。この業界での有名人が一たび,介護を語り出せば,ボケた年寄りが肩を揉み,村瀬のO型ハゲに髪を生やそうと爪で突つく。広場と呼ばれたハゲには血が滲むことになる。これを講演のエピソードに使う。ウケないわけないだろ。
 この二人が,著者に「ねえ,鹿子さん。…今度ね,…ほら,あなた原付バイクでくるじゃない。そんときにさ,ちんちん出してきてくれんかな?」「ね?ね?バイト代はちゃんと出すけんさ。ね?」。年寄りと面白い時間を過ごそうとするためとはいえ,クレイジーである。
 魂のこもった本当の介護,本当の施設をつくるために汗するとはどういうことか。地域への説明会に村瀬孝生の肩の力の抜けた,それでいて自分たちのスタイルを貫くためのくだけた挨拶が秀逸だ。こんな挨拶をしよう,等身大の自分を語ろう。シェケナベイベーだぜ。


へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々

へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々