共感の作法


 名著である。


感じない子ども こころを扱えない大人 (集英社新書)

感じない子ども こころを扱えない大人 (集英社新書)


 著者のブログエントリーにあるように取り上げた新聞記事で知って気になった。おそらく,これまでも背表紙や平積みされた表紙,新聞広告などで見てはいた。ただ,それだけだった。今回,この記事にある「ネガティブな気持ち」,「マイナス感情」の文字が目を引いた。
 コミュニケーションや人間関係に関する本は毎年,うんざりするほど出版され,その内容の薄さにがっかりしたり,同じエピソードや有名人の体験談が繰り返されたりして,決してお得感がなかったりする。ここは,これまで生き残ったロングセラーや定本ものをじっくり味わうのが正しい態度だ。
 しかし,多くの本で「共感が大事」と必ず出てくるのだが,どうするのが共感であり,共感していることを伝えることになるのか,それは決して多くのページが割かれてはいない。よく聞くための傾聴の方法として,うなずく,アイ・コンタクト,相づちを用いることと言われる。では,共感とは?このことについて,

 カウンセリングに関してのどんな教科書を見ても,「共感」がいかに大切かが強調されている。しかし,具体的にどのようにして「共感」するかについて触れているものは少ない。そのため,先にあげたような「嫌われてる,って感じるんだね」という答え方のように,嫌な気持ちのダメ押し状態を作り出すことが多い。
 また,ただ「わかる,わかる」というだけでは,「本当にわかったのかどうか」が相手に伝わりにくい。では,どうすれば「あなたの気持ちがわかったよ」ということが伝わるだろうか。


p.29 「感じない子どもこころを扱えない大人」(集英社新書): 袰岩 奈々


種明かしはしない。ぜひ,この本を手に取ってほしい。ポイントは「感情を表わす言葉」である。自分の気持ちを言葉にして伝えることだ。なぜなら,

起きてから寝るまで,感情はついてまわっている。それを無視していると,自分の気持ちがわからなくなるし,自分の感情に無関心になる。そして,周りの人の感情もわからなくなったり,無関心になるといったことがおこりはじめる。


p.73 「感じない子どもこころを扱えない大人」(集英社新書): 袰岩 奈々


からだ。
 人間とは感情の動物と言われる。感情がある動物ではない。単純な感情なら犬や猫にもある。感情でもって気持ちを共有したり,わかちあうのが人間なのだ。


参考→若者の未来interview 第11回:袰岩 奈々氏(心理カウンセラー・日本大学文理学部非常勤講師):日経進学Navi 大学・短大サーチ


 追記:惜しいと思うのは書名だ。もっと手に取ってもらうものにならないだろうか。「共感の作法」なんて,かえってうさん臭いだろうか。