創作ってのは,こういうのをいうんだろう!辻原登著「円朝夫婦芝居噺 夫婦幽霊」を読んだよ。


 朝日新聞,2010年8月1日の読書欄の「ゼロ年代の50冊」で紹介された一冊。
 この本の帯には,こうある。

円朝が「残した」速記録を解読し,幻の傑作落語『夫婦幽霊』を現代に甦らせる。さらには,そこから浮かび上がる芥川龍之介の影……。辻原登が描く古今無双の知的エンターテイメント文学ミステリー。


そう,ミステリー。なので紹介そのものは,この帯にあるだけで任せよう。
 読後,何か解けたか?いや,全然だ。こうであっただろうとすると一つの筋として考えられますよね。その程度だ。すっきりとはしない。だが,読み終えての満足度は高い。それは,積み重ねられた出来事の数々の逸話のうち,どこまでが,フィクションなのか。えっ,これ,もしてかして,最初からすべてが,著者による創作なのか?と,途中で思い始めるのだ。だが,読み始めて,ページをめくるスピードを落とすわけにはいかない。読む。読む。話は,より,深く広がる。
 圧巻は,書き下ろしの「訳者後記」の段。さらに輪をかけて,もはや,どこまでが…。だが,そんなことは,どうでもいいのだ。誰による創作であろうと,問題ではない。ここに素晴らしい作品がある。著者は,辻原登
 落語の節回しの抑揚をイメージしながら,ぜひ,楽しんでほしい。オススメだ。


円朝芝居噺 夫婦幽霊

円朝芝居噺 夫婦幽霊