まさに大学の実践的な問題解決力!工学院大が石巻の高台に木造住宅を10棟建設に


 この震災で,自然の力の大きさに人間の知恵や工夫に無力さを感じた方が多かったに違いない。そんな中で「いま,自分にできること」の合い言葉がうたわれつつも,専門性を十分に発揮できたのは,救命・救助が中心となっていたと思う。
 なぜか。それは,問題解決を事業化し,関係する方達とマネジメントできていないからだ。問題に対し,解決方法をパッケージで提案しなければ,受け入れられるものではない。

被災者に仮設ではなく常設の住宅を提供しようと、工学院大と資材通販大手「MonotaRO」は、宮城県石巻市北上町の私有地に住宅10棟を建設する。今月末に着工し、7月末の入居を目指している。立案した工学院大の後藤治理事は「被災者は居住性の優れた常設住宅を望んでいる。仮設、常設という従来の2度の建設という手間とコストを軽減できる今回の構想を、新しい地域再生のモデルとして提唱していきたい」と話す。【田中泰義】


 土地は白浜地区のホテル跡地。同地区にあった約40世帯分の家屋はすべて津波で壊れたが、この土地は標高40メートルの高台にあり浸水しなかった。


 建設される建物は、木造2階建て住宅(延べ床面積約70平方メートル)7棟と平屋(同約42平方メートル)3棟。また、身寄りのない子どもや高齢者が暮らす共同住宅1棟も用意する予定。設計は工学院大建築学部で、施工は地域経済の復興も狙い、地元の工務店が請け負う。建物は同大と地区自治会の共有になる予定。


 構想は、工学院大による各地の被災状況の調査がきっかけ。今回の場所はホテル跡地だったため、水道などのインフラがあり、早期の住宅建設と入居が可能と判断。所有する仙台市産婦人科医、桜田信義さんに相談すると、「森があると海が豊かになるので植樹してきたが、今は被災者を応援したい」と快諾した。1軒当たり約1000万円の建設費は同大の関係者らの協力で確保した。


東日本大震災:「常設」住宅で復興を 石巻に10棟計画 - 毎日jp(毎日新聞)

 入居者は大学と25年間の定期借家契約を結び、借地料(月3千円超)を含む毎月の負担は、2階建て住宅で1万7千円という。大学は家賃収入を石巻市に寄付し、将来は市か自治会に権利を譲りたい考えだ。


asahi.com(朝日新聞社):仮設でない永住の家建設へ 工学院大、絆重視し被災地に - 東日本大震災


記事を抜き出せば,以下のスペックとなろう。

  • 設計:工学院大建築学
  • 施工:地元の工務店
  • 所有(建物):同大と地区自治会の共有
  • 入居契約:定期借家契約(25年間)
  • 立地:標高40メートルの高台
  • インフラ:ホテル跡地のため完備


こうしたスキームのもと,事業を構築することで,説得力の高いプランとなる。裏を返せば,ここまでのプランを組み立てなければ通じないわけだ。床屋政談,床屋談義に花を咲かせるのは勝手だが,あなたの専門性がくすぶっている理由は,現地に通じるだけのプランになっていないからだ。せっかくの専門性が,より問題解決に発揮されることを願ってやまない。本来持っている知識と経験は,決して工学院大学に劣るものではないはずだから。
 いま,示されている完成予想図が実現するのを,私も待っている。そして,これ以上のプランと出会えるのも。


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