織田有楽斎である。織田長益。
茶道を嗜む人にも,歴史マニアにも知られているとおりだから,ここではその人には触れない。一般への知名度を考えると,この人を主人公に抜擢はしないよね,フツー。と,思いつつ手に取ってみると,まあ,セリフがオール名古屋弁。語尾が,「りょう」「だでね」「きゃあっ」。読みにくい。でも,実際,こういうことなんだよね,と思うし,かえって現実感がある。そして,兄・信長に「兵法(ひょぼ)くれ」と呆れられる存在として長益が描かれる。
弱虫,腑抜け,意気地なしのため,武将としての栄達ではなく,茶道をもって生きる,生き延びた生涯。もっとも,兄の七光りゆえにギラつきを抑えて生きざるを得なかったというほうが適切のようにも思う。
その長益をして,
まったく人間,年は重ねるものである。
身は老いて枯れ果てるとも,そのうちに知らず知らず育まれては醸されたる渡瀬の知恵と精神の豊潤こそを,若に対して誇るべきなのだ。
年をとるのって,イイナと思うし,年をとるのは難しいな,とも思う。
アントレプレナーシップや市場競争社会に,猛々しく雄々しい大バトルにあって,そこに参戦せずとも生き残ることについて,考える材料にはなるかもしれない。
登場人物のほとんどは知られた人なので,オススメできますよん。
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