これが江戸の風ってもんよ!「半七捕物帳」を読んだよ。


 今年,読む小説シリーズということで。
 時代小説といっても史実に残る有名人が登場人物ではなく,フィクション。裏表紙の説明書きには,「岡っ引き上がりの半七老人が,若い新聞記者を相手に昔話を語る。『石灯籠』事件で初手柄をあげ,以後,二十六年間の岡っ引き家業での数々の功名談を,江戸の世態・風俗を織りまぜて描く,捕物帳の元祖!」とある。導入部と締めが,昔話として語りであって,メインはもちろん半七親分が主人公。これが実に気持ちイイ。粋な江戸の風がひゅるりと吹いてくる。
 奇怪な話しも多いが,そうした話しよりも当然,現実味のある話しの方がオモシロい。なぜか。著者は,1872年(明治5年)・東京生まれ。徳川家御家人の長男なのだ。江戸の体現者が,シャーロック・ホームズに刺激されて描いた探偵談なのだ。「犯人は妖しでした」よりも,ミステリーとして犯人は誰だろうか,と読者をグイグイ引き込む方がオモシロいのは当然だろう。
 構成に手を加えれば,すぐにでも落語の台本になりそうな話しばかり。誰か,すでに落語の原作にしてる人はいないのだろうか。いなけりゃ,自分がやりたいくらい。
 全六巻のうちの第一巻。残りをまだまだ楽しめる。ちょっと嬉しい。


半七捕物帳〈1〉 (光文社時代小説文庫)

半七捕物帳〈1〉 (光文社時代小説文庫)