読書感想文「樹木希林 120の遺言 ~死ぬときぐらい好きにさせてよ」樹木 希林 (著)

 「全身がん」と称した晩期の言葉を集めた本だ。類書も多く出版され既に読んだものもあり,重複するだろうと思って手に取るのをためらっていた。だが,活字も大きく,話し言葉,全面の写真の多用もあって,すぐに読み終えた(47歳の写真は出川哲朗にそっくりだ)。読むと発見もあった。
 ほとんどがインタビューや対談であることを考えると,希林語録とは,言いよどむことが無い「言い切る」人である,という再認識だ。自分はこうしたい,こう思うをいつも考えているのだろう,そうでなければ,言葉は出ない。
 そして,内田裕也への評価の高さだ。そして,内田裕也を内田たらしめよう,かっこ付けさせてやろうとする姿勢だ。内田を手放すことは容易だったが,自身が求めたため,関係は続いた。そんな内田への感謝でもある。
 裏を返せば,「愛想を尽かす」やさしさと,それでも求める「欲」。おそらく,20代に自身の(有能である)能力に気づき,自分の身の置き所を思うと遣り場がなくなった,のではないか。
 噛みしめれば,「業」と戦った人の一冊でもある。