読書感想文「京都がなぜいちばんなのか」島田 裕巳 (著)

 それは,カラー写真のせい!と,チコちゃんなみに素っ頓狂なことを言ってみたくなる。京都という圧倒的なポジションを成しているのは,伏見稲荷大社の千本鳥居,池とセットになった金閣寺,ザ・苔寺西芳寺,さらに,平等院鳳凰堂石清水八幡宮などだが,これらは,少なくとも240年前には今とは様子が全く違ったことが明かされる。「伝統ある京都って,いちばんだよね」をつくるこれらの姿は,のちに形作られた最近のものだったのだ。ガーンっ!
 ビジュアルイメージにおいて,鮮烈な色・カタチは重要だ。鳥居の朱。輝く黄金色。静けさを醸す苔の緑。池と左右対称の建築。山上の社殿。これらが伝わるためには,カラー写真とカラー印刷された大量の出版物という技術の登場が欠かせなかったわけだ。
 観光とはイメージの再生である。伝聞されたイメージの実物を見て,わー、凄―い!と言わせてなんぼだ。説法・念仏をいくら聞かせるよりも,仏像・仏画を見せて「うわー!」と言わせりゃ勝ちだもんな。