キャバリエな話 旧・Column Kazuhiro 2000

 突然,クルマの話なのだが,昨日の朝,ホンダS2000を見た。リタイヤしたばかりの元気そうな夫婦がオープン状態で乗っていた。この手の"北海道ツーリング"の季節が始まったのだ,もう初夏なのだ,と思った。
 夫婦でドライブすることでいえば,忘れ得ぬシーンがある。キャバリエに70を過ぎたと思わしき老夫婦が乗っていたのを見た。小柄な日本人が"ちょこん" と乗っているのが印象的だったのだが,ふくよかな空間が二人を包みこむ様子に,私は「トヨタが輸入した意味があった!」とうれしくなった。もう販売中止になって久しいが,キャバリエの存在意義が彼らのためにもあった。アバロンにもセプターにも,キャバリエの代わりはできない。彼らがともに過ごした時間を受け入れられるだけの"のりしろ"がない。もちろん,他の日本車にもない。上質で"カチッ"とした後で乗り手の印象が残らぬほど自己主張するクルマばかりで,もはや路上が窒息しそうなのだ。微笑ましく振り返させるクルマが消えつつあるのだろう。
 ホッとさせるだけの当たり前のクルマと,ごく普通にモータリゼーションの時を経た老夫婦のステキな組み合わせを見た。
EXTENDED BODY: