NHK「ドキュメント72時間」最終回を惜しむ

 ブログ界隈では,決して良い評判とばかりは言えぬNHKではあるが,NHKのヘビーユーザーを自負する私としては,毎月もう1,000円を追加して払っていいとさえ思っている(年間契約しているので,12,000円アップではなくオマケしてね)。もちろん,これは談志も出ている「新・話の泉」を筆頭に,私の暮らしの友であるNHKラジオ第1放送を含んでの話しなのだけど(NHKラジオ第1放送については,また別の機会にエントリーを書く)。


 突然のことでショックだったのだが,大好きなドキュメント番組「72時間」が,一昨日13日で終了した。

 この番組紹介には,こうある。

 「ドキュメント72時間」は、全く新しいタイプのドキュメンタリーです。同じ場所や同じ人々を3日間・72時間
撮り続け、30分に凝縮させる。ドキュメンタリーにありがちなお説教や予定調和の構成は一切ありません。
「リアリティ」に徹底的にこだわって、撮影開始から72時間のあいだにカメラの前で起きたことを、ありのままに
伝えます。

 気にもとめていなかった社会の片隅の出来事。ニュースからはこぼれ落ちてしまうささやかな喜びや悲しみ・・・
そうした日常の断面の3日間を見つめているうちに、自分には関係ないと思っていた社会の営みが、自分ととても
近しく、一瞬一瞬を大切にしていることが見えてくる・・・そんな番組を目指します。

 人と人とのつながりがどんどん希薄になっている今、少しだけ立ち止まって、自分以外の日常のドラマに
目を向けてみませんか。


ドキュメント72hours | 番組紹介

 毎週の頻度で,72時間のテーマを見つけ追う。しかも,制作局が各地方局で行われていることもあって,ノウハウの蓄積も侭ならず,苦闘しながらの番組放送だったのだろうと想像する。こうしたスタッフの労苦には,労いと感謝を伝えたいのだが,そうであったのならば,放送を月2いや月1のペースででも放送を続けて欲しかった。また,現時点だからこそ言えるのだろうが,早くから日本各地のネタに取組むことにアセリのようなものを感じる。そうしたある種の張りつめたものが番組の寿命を縮めたのであれば,ただただ,残念だ。

 上記引用の番組紹介にあるように,何かのクライマックスを期待しての収録スタートでは無いにも関わらず,撮影6〜4時間前になると,ググッと胸に迫るものが来る。その場所で繰り返されるうちの断片に過ぎない60時間目を過ぎた辺りには,つい,その世界の人たちに心通わせている気分になっていて,このカメラがその現場を離れる頃に,徐々に視聴者に戻り,その世界の人たちと別れる寂しさがこみ上げて来るのだ。

 1番好きだった放送回は,第3回「東京駅 高速バスターミナル」。とかく旅と言えば鉄道が取り上げられてしまうものだが,バスしかもそのターミナルで旅行者それぞれを追うのは,良かった。2番目は,第13回「大阪・心斎橋のホームランキング」。キング本人がただただキングであること,そして,バッティングセンターで働く若い従業員から親しみと敬愛を持たれてキングであること,見ている私は,キングにはキングでいて続けて欲しいと願う。そんな放送回だった。

 ナレーションは,若い俳優を起用し,この点でも番組の意欲を強く感じた。鈴木杏の感情の出し加減がよく,才能を感じずにはいられない。回数の多い吹石一恵は,感情の殺し方に味を出していた。

 最期に,これだけは触れておかなくてはならない。番組テーマ曲 松崎ナオ「川べりの家」だ。なにしろ,番組ホームページからこのテーマ曲ページへのリンクがあるくらいだ。きっと,番組プロデューサーはこの曲をテーマ曲に決めた際,成功を感じたことだろう。番組の印象を決めてしまうような,そんな曲だし,歌詞を全て掲載する扱いに特別なものを多くの方が感じるのではないだろうか。


 お願いだ。再開して欲しい。



川べりの家

川べりの家