ハンドメイドの専門道具製造業が成り立たないということ。


 最近,一読した後,もやもやとしたものが残る記事があった。

 オーケストラや吹奏楽団,合唱団の指揮者の道具といえば,もちろん指揮棒。ガラス繊維やカーボングラファイトの素材もあるが,東京都荒川区に我が「村松商店」では戦後間もない頃から木工の指揮棒を扱っている。
 今も1本1本,手作り。「村松バトン」の名で販売している。指揮棒を専業とするメーカーは日本でほかにないだろう。


「木工指揮棒作り、腕振るう――村松商店代表村松恒至氏(文化)」 日本経済新聞 2014/09/08


あの棒である。ときに譜面台を叩き,合唱団やオーケストラを導くあの棒だ。村松商店には,著名な指揮者からの依頼があるという。だが,

 ずっと棒もコルクも手作りやってきたが,いつまで続けられるだろうか。職人の高齢化,後継者不足が指揮棒作りにも響くようになるだろう。


「木工指揮棒作り、腕振るう――村松商店代表村松恒至氏(文化)」 日本経済新聞 2014/09/08


例によって,マーケットも技術がそこにあるのに,先細りする事業という,いつもの話しだ。

 うちの指揮棒の値段は500〜1万円。それだけではとても生活できないので,テニススクールでコーチをしつつ,商売を続けている。少子化の影響か,学用品の需要も落ちてきた。だがせっかく買ってくれる人がいる以上,できる限り作っていきたいと思う。


「木工指揮棒作り、腕振るう――村松商店代表村松恒至氏(文化)」 日本経済新聞 2014/09/08


兼業農家ならぬ,兼業職人である。ハイエンド・ユースの道具をつくる職人が,それを専業に飯が食えないという現実がある。何かがオカシイ。金融機関,経営支援機関,コンサルの皆さんの腕の見せどころだと思うのだが,いかがだろう。



村松商店 - 東京楽器製造協会