読書感想文「おっさんの掟: 「大阪のおばちゃん」が見た日本ラグビー協会「失敗の本質」」谷口 真由美 (著)

 胸糞悪くなって最後まで読み通せるだろうか。途中,本当にそう思った。
 モノカルチャーホモソーシャルな組織運営,グロテスクな上意下達な縁故主義,バカバカしいくらいに不明瞭な意思決定。あー,ダメだ,こりゃ。しかも,まだまだ,存命どころか現役の方々の実名入りでの文面,アウトサイダー視点ではあるけど渦中の人による渾身のルポ。ヒヤヒヤものだ。だが,やがて考古学的に掘り起こされるのではなく,この同時代に起きた始末を共有することは大切だ。
 谷口が組織の壁に跳ね返され「負けた」のは何故か。その一方で,川淵三郎JリーグBリーグを成功させることができたのは何故か。ケンカの仕方である。徒党を組んだ相手の大将首をガツンと撥付け,その子分どもを意気消沈・戦意喪失させ,牛耳ったかどうかだ。頼まれて,絆(ほだ)されて,引き受けざるを得なくなった谷口は気の毒だが,「大義」を掲げて世論を味方につけ,たとえ勝てなくても,負けないことためにできることはあった。
 おっさんは邪魔をし,露骨に足にを引っ張り,無視をしただろう。だが,そんな小物の連中に負けないしたたかな戦略と精神的なタフさを維持するための精神的な兵站を確保できないまま,戦線に飛び込んでしまったツケが生んだ結果でもある。谷口の敗戦から我々が学び取る教訓はそこにある。