読書感想文「極楽征夷大将軍」垣根 涼介 (著)

 才気張ったマネジメントの敗北である。
 マネジメントとは科学の対象である。経営科学という。では、先学に問う。足利尊氏におけるリーダーシップや、マネジメントの秀でたる面とは何か。ワンオンワンを熱心にやるか?傾聴を実践しているか?心理的安全性に気を遣っているか?いずれも否だ。そもそも、自らリーダーシップやマネジメントを意図などしていない。まして、自分自身に期待などしていない。
 人の器とは、直心な心根(こころね)なのだ。小利口に考えを巡らす連中や知識を増やせば解決能力が上がると思ってる輩は思い知るべきなのだ。道理や虚栄は嫌なのだ、と言えることの方がよほど大事なのだ。この点、江戸っ子の方が、寸法や了見、見栄を言う。余程、武張っていて、尊氏に比べ商人や職人ですら武士っぽい。
 詰まる所、我を張らず、退けばいいのだ。尊氏は繰返し、一つしかない命を大切せよ言う。そして、良く負けよ、とも。余力を残して負けてこそ、再起の日も来るのだ。だからこそ、日々、よく負けよ。とは言え、尊氏のようなトップに泣きつかれてたって、絆されちゃいけない。