読書感想文「中学生から知りたいウクライナのこと」小山哲 (著), 藤原辰史 (著)

 起きている事象は単純でも、その事情は単純ではない。
 ウクライナ史を語るとき、ロシア以上に、ポーランドリトアニアを抜きにして語ることはできない。このことだけでも十分に厄介だ。カトリックユダヤ教東方正教会の複数の宗教もある。さらに、コサック、モンゴル帝国オスマン帝国、第1時世界大戦、第2時世界大戦もある。一筋縄ではいかない。
 とは言っても、やはりマイダン革命とクリミア併合である。僕らは、大国周辺の中小国の事象として侮った。しゃーねーじゃん、どーしよーもないじゃんでは無かったのだ。箱にパンパンに詰めた複数の風船の一つを割ると、他の風船が膨らみ元の風船があった空間を埋める。ことほど左様に権力の空白や権力が及ばなくなると、ヘルニアのようにパワーがその部分へ、はみ出してしまう。
 モノや情報ばかりでなく、ヒトも当たり前に国境を超えて行き来するようになった。その時、その場での商売は誰とでもできる。だが、暴力を制御すること、私権を尊重すること、異なる意見を認めベストプラクティスを探ることに共通の価値を見いだせない者とは隔てた国境で対峙せざるを得ない。
 そのために、中学生以上の僕らは知ることの歩みを止めてはいけない。