読書感想文「感性でよむ西洋美術」伊藤 亜紗 (著)

 「考えろ、感じろ」な美学入門である。
 実は、僕らは美術の教科書を持っていたり、たまに開いたりしたが、何か教わっただろうか。実は、美術とは知識であり、概念である。「きれー」とうっとりしたり、「すごい!」とため息をついている場合では無いのだ。ここで表現しようとしているのは何なのか、実際、画面の上に描かれているのはどんな狙いや意図があって、そこに表現されているのか、すなわち美術の歴史すなわち人類のその当時の世界認識である美術表現を、自分の言葉で語るのが美術鑑賞なのだ。
 なので、僕らは知らなくてはならない。教わっていないので、美術の見方を伊藤亜紗に学ぶべきなのだ。「美術を理解するなんてとんでもない、そんなセンスや特殊な才能に恵まれていないからムリよー、「きれー」や「すごい!」とさえ言っていればいいのよー」と、そんなことは言ってらんないのだ。美術の見方を知ることで、目の前の現実の見方が変わるのだ。だって、2500年の西洋美術史は、その時々で、生々しかったり、宗教がかってがんじがらめだったり、大袈裟だったり、理屈っぽかったりと同じ網膜に映る事象なのに、その現実への見方が変わったために表現が変わったのだ。
 美術を知るとは、現実を固定した視点で見ることへの疑問を手に入れることだ。さぁ、扉を開けよう。