読書感想文「目の見えない人は世界をどう見ているのか」伊藤 亜紗 (著)

 読後,「あ゛ー,頭を使った」と口をついた。見えないこととは,世界を理解していないわけではない。目の見えない人は,目の見えない人の世界があり,その理解や認識の仕方を,見えてる側から解釈していく。そのことがフルに脳を使わせる。この疲労は既視感がある。そう,一人で外国にいるとき,伝わらない言葉を必死になって繰り出し,そして,聞き取れない外国語を解釈しようと精いっぱい頭を使っている,あの感じだ。
 健常者の障害者観は,劣った人,かわいそうな人,ハンディを持った人という健常者側の世界観で障害者を「見ている」に過ぎない。健常者のものの見方,考え方を出ていない。しかし,障害者側の世界像はあり,その世界を柔軟に生きている障害者というものをどこまで僕らは理解できていないのかを,この本は教えてくれる。
 「情報」と「意味」。「自立とは依存先を増やすこと」。「回転寿司はロシアンルーレット」。「感情の消費の節約」。などなどキーワードが盛り沢山だ。
 伊藤亜紗という福音を他の著書でも楽しんでみたい。