読書感想文「戦国日本と大航海時代 秀吉・家康・政宗の外交戦」平川新 (著)

 日本史を日本国内の事情からだけ考える時代の終わりを告げる一冊である。
 戦国時代に鉄砲伝来。暗記するなら,それで十分。だが,なんで?と子どものように質問を,いや,QC活動のように質問を繰り返す。寧波や呂宋を経由して,海上物流が発達していたから。倭寇を含め日本人が交易の仲介や案内人となっていたから。インドや中国(明)にスペインやポルトガルが進出していたから。そう,世界は大航海時代だったからだ。
 では,なぜ日本は植民地化されなかったか。鉄の生産量,加工技術が経済力の発達とともに増し,武力勢力が台頭した軍事統一国家なのだから,負けなかった。それどころか,世界を二分しようとするカトリック2国のアジアでの覇権を跳ね返そうとする野心。それこそが信長・秀吉の大陸進出の理由。こんなこと,「恩賞を与える土地が無くなったから」「秀吉の自己顕示欲」「秀吉が耄碌して偏執狂が止められなくなった」などなど,今まで言われてきたことは全く視野が狭い。家康もオランダ人やイギリス人だけでなくスペイン人にも会っていたし,キリスト教の布教による日本征服の野望が無ければ,交易をしたいとさえ思っていたのだ。
 歴史をどう見るか,僕らの目は開いているか。考えさせられる。