読書感想文「ルポ 無縁遺骨 誰があなたを引き取るか」森下 香枝 (著)

 死とは忌もの、禁忌である。日常生活からは憚られる。なので、通常の日常原理とは違う物差しで物事が動く。「身内に不幸が」と言えば、「そりゃ、しゃーない」となる。
 身内すなわちプライベートな冠婚葬祭として、これまで家族単位で死が扱われてきたものが、パーソナルなものになって、いよいよ旧来の扱い方、捉え方では、死に伴う遺骨や墓、財産の取り扱いが行き詰まってきた。人は皆んな必ず死ぬ。看取られて死ぬこともあれば、あれれ、と後から気づくこともあるし、だいぶ経ってから見つけられることもある。問題は、死んだ後だ。驚いた。引き取り手がない場合、墓地埋葬法による葬祭と生活保護法による葬祭扶助が市町村の負担(支出と手間の両面で)として重くのしかかる。そして、いったん死因不明で警察の世話になってしまうと時間も手続きも面倒で、「いかに異状死として警察に届けずに済むように、かかりつけ医に死亡診断書を書いてもらえるか」が大事になるという。
 社会経済の最小単位が個人となっている以上、立法の問題として動きが出始めていることを歓迎したいし、そうした現状を踏まえ、相続に関わる業務をする全ての士業には必読の一冊だと思う。