24年前のカセットテープを聞いた。


 「ステレオ」を引っぱりだした。
 オーディオセットなどというものは,最近の電気屋のチラシで見ることはなくなったが,かつては男子の趣味として,それなりの地位を確立していたものだし,あー,次はスピーカーはこっちのメーカーがイイかなーと悩むふりをしながら楽しむものであった。
 私も10代の頃から親にずいぶんと無理を言ってオーディオセットを買い揃えってもらったし,当時の流行は「エア・チェック」だったから,FM番組雑誌を買って曲の長さを調べつつ録音したものだった。細かい作業が好きな者はそこからダビングを施してオリジナル・テープの作成となるが,私は借りて来たCDやLPレコードからの録音や,レーベルごとの特集をする番組を丸ごと録音することでテープの出来上がりを楽しんだ。
 場所や手間を大げさに費やすオーディオセットの向き合いは諸事に振り回されるうちに簡便な方向に流れ,そのうちパソコンをネットに使いだす頃には,音楽とも疎遠になっていった。チラシから消えたオーディオセットにはこうした背景があったのではないか,と思う。また,音楽を共通の話題とすることより,レンタルしたビデオが仲間内での重要さをましたことも大きな理由なのだろう。
 左右別々にしまってあったスピーカー,埃をかぶったアンプ,CDプレーヤー,チューナー,カセットデッキ。それぞれをつなぎ,音を出す。接点が悪かったり,アンプがザリザリと妙な音を出したり,とずいぶんとひさびさに音を出すものだから,心配がつきまとう。
 ラジオ,CDと機械がなれて来た後,カセットテープを聞いてみることにする。出力レベルを上げ下げすることで,やっと音がまともに出るようになってホッとした。かけたテープのケースには,1984.3.2とある。そうか,24年前に録音したのか。ノイズ・リダクションはオフ。タイプはノーマル(「ハイ・ポジ」じゃないのだ)の54分テープ。もちろん,Made in JAPAN。
 思っていたより音質が良い。もっと,ヒス・ノイズがあるんだろうなと思っていたが気にならない。それより,こうして大きな音を24年も前に部屋中に響かせていたんだな,と思う。こうして自分の手書きの文字のケースを眺めながら。そうして,ときに口ずさみ,ときにノリに合わせて体をジタバタさせながら。


Under a Blood Red Sky

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